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肥満症
肥満症は、お腹まわりに脂肪がたまりやすくなり、医学的に病気として扱われる状態を指します。
肥満症になると、余分な脂肪が体の働きを邪魔し、息切れやだるさなどの変化が出やすくなります。
この記事では、肥満症の成り立ちから原因、症状、肥満との違い、診断の考え方、治療法の基本を順番に説明します。
読み終えると、肥満症がどのように起こり、どのように体に影響するのかを整理して理解できるようになります。
肥満症とは?定義を解説
肥満症は、脂肪が増えて体に負担がかかり、健康に影響する不調が現れた状態です。
脂肪が増えると、内臓の周りが圧迫されやすくなり、呼吸や血液の流れに影響が出ることがあります。
その結果、階段で息が切れやすくなる、日中に強いだるさを感じる、血糖値が乱れやすくなるなどの変化が起こります。
こうした変化は、体がエネルギーをうまく使えなくなることで生じるもので、日常生活の中で徐々に現れやすくなります。
医学的には、体重が重いだけでは肥満症とはみなされません。
体に具体的な不調が起きているかどうかが区別のポイントであり、見た目では判断できない部分が重要になります。
肥満症の原因
肥満症の背景には、食事や運動の習慣だけでなく、体質やホルモン、薬や病気の影響など、いくつかの要因が重なっている場合があります。
食べ過ぎだけが原因と決めつけてしまうと、本当に関係している理由を見落とすことがあるため、どのような種類の原因があるのかを整理して理解しておくことが大切です。
| 原因の種類 | 内容 |
|---|---|
| 生活習慣 | 食事量や活動量のバランスが崩れることで脂肪が蓄積しやすくなる |
| 体質・ホルモン | 生まれつきの体質やホルモン分泌の変化によって代謝が低下する |
| 薬・病気 | 服用している薬や病気の影響で体重が増えやすくなる |
食習慣や活動量低下の影響
食習慣や活動量低下によって起こりやすい習慣
- 高カロリーの食事や甘い飲み物が多い
- 早食いが習慣になっている
- 座っている時間が長く、歩く時間が少ない
- 睡眠不足や強いストレスが続いている
肥満症の原因として最も多いのは、食べる量や内容と、動く量のバランスが崩れることです。
食事からとるエネルギーが消費量を上回る状態が続くと、余ったエネルギーが脂肪として蓄えられます。
高カロリーの料理や甘い飲み物が多い食生活、早食いが習慣になっている食べ方は、必要以上のエネルギーを取り込みやすくします。
また、デスクワーク中心で一日中座りっぱなしだったり、移動手段の多くが車や電車で、歩く時間が少なかったりすると、消費されるエネルギーは自然と減ります。
さらに、睡眠不足や強いストレスは食欲を乱しやすく、「つい食べ過ぎてしまう」行動につながることがあります。
これらの要素が積み重なると、脂肪が増えやすい状態が続き、その結果として肥満症へと進みやすくなります。
生まれつきの体質やホルモン変化の影響
肥満症は、生活習慣だけでは説明しきれない場合もあります。
生まれつき脂肪をため込みやすい体質や、エネルギーをあまり使わない体質の人もいて、同じような生活をしていても人によって体型に差が出ることがあります。
家族に太りやすい人が多い場合は、遺伝的な要素が関わっている可能性があります。
また、年齢とともにホルモンの分泌が変化すると、筋肉量が減り、基礎代謝と呼ばれる「何もしなくても使われるエネルギー」が低下します。
特に中年以降は、若いころと同じ量を食べていても体重が増えやすくなることがあり、本人の努力不足だけでは説明できない体の変化も関係します。
このように、体質やホルモンの影響は目に見えにくいものですが、肥満症を考えるうえで無視できない要因です。
薬の影響や病気の影響
肥満症には、飲んでいる薬やもともとの病気が関わっていることもあります。
体重が増えやすくなることが知られている薬や病気の例
- ステロイド薬の一部
- 精神の症状に用いられる薬の一部
- 甲状腺の働きが低下する病気
- 睡眠時無呼吸症候群
薬の中には、食欲を高めたり、水分や脂肪を体にため込みやすくしたりする働きをもつものがあります。
たとえば、ステロイド薬の一部や、精神の症状に用いられる薬の一部には、体重が増えやすくなる副作用が知られています。
また、甲状腺の働きが低下する病気では、体の代謝が落ちてエネルギーをあまり使わなくなるため、今までと同じ生活でも体重が増えやすくなります。
さらに、睡眠時無呼吸症候群のように眠りが浅くなる病気があると、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れ、食べ過ぎにつながることがあります。
このような場合、生活習慣だけを見直しても体重が減りにくいことがあり、薬や病気が原因の一部になっている点を理解しておくことが重要です。
肥満症の症状
肥満症では、脂肪が増えることで体のいろいろな部分に負担がかかり、日常生活の中で気づきやすい変化が現れます。
症状は一つではなく、呼吸のしづらさ、動きにくさ、だるさ、睡眠の質の低下など、体の働きが広い範囲で乱れやすくなることが特徴です。
体のどこに変化が出ているかを知ると、自分の状態を理解しやすくなります。
息が上がりやすいなどの呼吸や心臓の変化が起きる
呼吸や心臓に現れやすい変化の例
- 階段や坂道で息が切れやすくなる
- 少し動いただけで動悸を感じる
- 体を動かすと強い疲れを感じやすい
肥満症では、お腹まわりに脂肪が増えることで横隔膜が動きにくくなり、呼吸が浅くなることがあります。
呼吸が十分にできない状態が続くと、階段を上るだけで息が切れやすくなったり、少し速歩きしただけで動悸を感じたりします。
さらに、心臓にも負担がかかるため、血液を送り出す力が弱まり、体が重く感じやすくなることもあります。
こうした変化は、体を動かすときのしんどさとして現れやすく、日常の動作に影響します。
膝や腰が痛くなるなど動きにくさが増加する
体重が増えると、関節や骨にかかる負担も増えます。
関節や動作に関する主な症状
- 膝や腰に痛みや違和感が出やすい
- 立ち上がりや歩行がつらくなる
- 動くこと自体が負担に感じやすい
特に膝や腰は体重を支える部分のため、痛みが出やすくなります。
例えば、立ち上がる動作が重く感じたり、歩いている最中に膝に違和感を覚えたりすることがあります。
負担が続くと、関節がすり減りやすくなり、痛みがさらに強くなる場合もあります。
こうした動きにくさは日常生活の行動範囲を狭めやすく、体を動かしにくくなる悪循環につながることがあります。
代謝が不安定になりだるさや血糖の乱れにつながる
代謝の乱れによって起こりやすい変化
- 食後に強い眠気やだるさが出る
- 疲れが抜けにくくなる
- 集中力が続きにくくなる
脂肪が増えると、体がエネルギーをうまく使えなくなり、血糖や脂質の調整が難しくなります。
血糖値が乱れやすくなると、食後の強い眠気やだるさが出る場合があります。
エネルギーの流れが安定しないと、ちょっとした動作でも疲れを感じやすくなり、体全体の調子が整いにくくなります。
こうした代謝の不安定さは、目に見えにくいものの、体のだるさや集中力の低下など、生活の質に影響しやすい症状として現れます。
眠りの質が下がり疲れがとれにくくなる
肥満症では、睡眠の質が低下する人も多く見られます。
睡眠の質が低下したときに見られやすい状態
- 夜中に目が覚めやすい
- 朝起きても疲れが残っている
- 日中に強い眠気を感じる
お腹まわりの脂肪が増えると寝ている姿勢で呼吸がしづらくなり、途中で目が覚めやすくなります。
睡眠が浅い状態が続くと、朝起きた時に疲れが残っていたり、日中に強い眠気を感じたりすることがあります。
また、睡眠不足はホルモンのバランスにも影響し、食欲が増えやすくなることもあります。
眠りの質の低下は、体の回復が追いつかない状態を作り、慢性的な疲労感につながりやすくなります。
肥満と肥満症の違いと診断方法
肥満と肥満症は同じ意味ではなく、体の状態を判断する基準が異なります。
肥満は体重や体脂肪が多い状態を示す言葉ですが、肥満症は脂肪が増えたことで体に不調や健康の問題が現れている状態を指します。
体型の印象だけでは区別ができないため、体のどこに負担がかかっているかを見ながら判断することが大切です。
肥満と肥満症の違い
肥満は、体重や体脂肪の量そのものを表す言葉で、見た目の変化だけでは体の状態まではわかりません。
一方、肥満症は体の不調や検査値の異常が現れているかどうかが判断の中心となります。
| 区分 | 考え方の違い |
|---|---|
| 肥満 | 体重や体脂肪が多い状態を示す |
| 肥満症 | 体の不調や健康への影響が現れている状態 |
例えば、血糖値が乱れやすくなったり、血圧が高くなったり、脂質が安定しにくくなるといった変化は、体の働きが影響を受けているサインです。
肥満症は、体の状態が健康に影響し始めたときに使われる医学的な言葉であり、ただ体重が重いだけの「肥満」とは区別されています。
肥満症の診断方法
肥満症の診断で確認される主なポイント
- BMIや腹囲などの体型に関する数値
- 血圧・血糖・脂質などの検査値
- 息切れや強いだるさなどの自覚症状
肥満症の診断では、体型だけで判断することはなく、いくつかの基準を組み合わせて確認します。
代表的なものは、BMIと呼ばれる身長と体重から計算する数値や、お腹まわりの大きさです。
しかし、これらの数値が基準を超えていても、体に不調が出ていなければ肥満症とは診断されません。
診断では、血圧・血糖・脂質などの検査値に異常があるか、息切れや日中の強いだるさなどの症状が現れているかを確認します。
つまり、肥満症は「体の負担」と「不調の有無」を合わせて判断するもので、見た目だけでは決めることができない状態です。
肥満症の治療法
肥満症の治療には、生活改善、薬物療法、外科療法の3つの方法があります。
| 治療法の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 生活改善 | 食事や運動など日常習慣を整える |
| 薬物療法 | 食欲や代謝を薬で調整する |
| 外科療法 | 体の仕組みを物理的に調整する |
これらはどれか1つだけで行うのではなく、体の状態や症状の程度に合わせて順番に選択したり、組み合わせたりしながら進めていく仕組みです。
どの治療も、「脂肪で負担がかかっている体を、元の働きやすい状態に戻すこと」を目的としています。
治療法ごとに役割や得意な部分が異なるため、それぞれの特徴を知っておくと理解が深まります。
生活改善(食事・運動・生活リズムの見直し)
生活改善は、肥満症の治療の基本となる方法で、すべての治療法の土台に位置づけられます。
生活の中で蓄積されてきたエネルギーの偏りを整え、体に溜まり続けている脂肪を少しずつ減らすことを目指します。
ポイントは「食べる量を極端に減らす」のではなく、エネルギーを取り過ぎない工夫と、消費する量を増やす習慣の両方を整えることです。
生活改善で意識したいポイント
- 食事量を少しずつ調整する
- 野菜やたんぱく質を意識して増やす
- 歩く時間や体を動かす機会を増やす
食事では、糖質や脂質の多い料理が続くと脂肪が増えやすくなるため、量を少しずつ調整しながら、野菜・たんぱく質・海藻類などを増やして全体のバランスを整えます。
例えば、炭水化物を一気に減らすのではなく、主食の量を「普段よりひと口分減らす」といった小さな工夫からでも効果が生まれます。
間食を控えたり、早食いを避けてよく噛む習慣をつけることも、満腹感を得やすくなり、自然と食べ過ぎを防ぎやすくなります。
運動では、激しい運動を急に始める必要はなく、まずは歩く時間を10分増やす、階段を使うなど、日常生活に取り入れやすい動きから始めるのが現実的です。
筋肉が増えると基礎代謝が上がり、脂肪を消費しやすい体になりますが、これは短期間では変わらないため、「少しずつ続けること」が最も大切なポイントになります。
生活改善は体質や年齢に関係なく誰にでも取り組める方法で、無理なく続けるほど体の負担が軽くなりやすくなります。
生活習慣の改善による減量を目指すときは、まずは毎日の摂取カロリーと消費カロリーを把握し、消費かカロリーが摂取カロリーを上回る生活を心がけることが大切です。カロリーの理解と、間食を避けることによる摂取カロリーの抑制についてはこちらの記事で解説しています。
薬物療法(食欲調整・代謝改善・GLP-1受容体作動薬など)
薬物療法は、生活改善だけでは十分な変化が得られない時に選ばれる治療です。
薬にはいくつかの種類があり、それぞれに得意な働きがあります。
主な働きは「食欲を整える」「脂肪の蓄積を抑える」「血糖や代謝を安定させる」といったもので、体が脂肪を溜めすぎないようにサポートする役割を担っています。
薬物療法の主な目的
- 食欲を過剰になりにくくする
- 血糖や代謝の乱れを整える
- 脂肪が溜まりにくい状態を保つ
代表的なのは GLP-1受容体作動薬 という薬で、体が本来持っているホルモンの作用を強めることで、食欲が過剰になりにくくなるのが特徴です。
この薬は、食事量が自然と減りやすくなり、血糖の変動も安定しやすくなるため、脂肪が溜まりにくい状態を目指します。
また、糖尿病の治療でも使われる薬の一部は、血糖値を整えることで体のエネルギーの流れを改善し、食後の強い眠気やだるさが出にくくなる働きを持っています。
一方で、薬には作用に個人差があり、体質によって向き不向きがある点も特徴です。
「飲めば必ず痩せる」という薬ではなく、生活改善と組み合わせることで効果が出やすくなる治療法です。
薬の影響で体に合わない反応が出ることもあるため、体の状態を見ながら調整が行われます。
薬物療法は、体のバランスを一定期間整えるための手段として位置づけられ、生活改善を続けやすくするためのサポートとして用いられます。
外科療法(胃の容量調整・吸収量の調整を行う治療)
外科療法は、体への負担が強く出ている場合や、生活改善や薬だけでは十分な改善が得られない場合に選択される治療です。
外科療法と言っても、目的は「体の状態を整えやすくするために、物理的な仕組みを変えること」であり、食べられないようにするためだけではありません。
外科療法で行われる主な調整
- 胃の大きさを調整する
- 満腹感を得やすくする
- 栄養の吸収量を変える
方法にはいくつかあり、代表的なのは 胃の大きさを調整する手術 と腸の働きを一部変える手術です。
胃の大きさを小さくすると、少量の食事でも満腹感を得やすくなり、自然と食事量が減ります。
これは、無理な食事制限をしなくても食べ過ぎを防ぎやすいという特徴があります。
また、腸の働きを調整する手術では、栄養の吸収の仕方が変わり、脂肪や糖質を体に取り込みにくくすることで、脂肪の蓄積を抑える効果があります。
外科療法は身体への変化が大きいため、慎重に判断されますが、脂肪による負担が強い人にとっては、体の働きを整えるための有効な方法となる場合があります。
手術後は生活改善を継続する必要がありますが、体の調子が安定しやすくなり、症状が出にくい状態を維持しやすくなることが特徴です。




